理系の連帯による世界と日本の貧困の緩和

世界と日本の貧困を緩和することが、理系の連帯の1つの目的となります。理工系(理系、理科系)の地位を高めることで、科学技術の発展を促進し、世界と日本の貧困を緩和することができるのです。


I.世界の貧困は、科学技術の発展により緩和される

1.世界の貧困と科学技術の関係に関する誤解

 世界の貧困は、不十分ながら、科学技術の発展により、大いに緩和されています。この現状認識は極めて重要です。なぜなら、かかる認識がないと、科学技術文明の恩恵を正当に評価できないからです。それは、先進国の役割である科学技術の発展への障害となる危険があります。

 もちろん、科学技術が発展した現在でも、飢えて死ぬ人は多いのです。アフリカの現状を見ると、科学技術は貧困の緩和に役に立たないかのような錯覚に陥ります。しかし、これは大きな誤解です

 科学技術は貧困の緩和に役に立ちます。ここで、貧困とは、単に経済的な面だけでなく、平均寿命などを含む概念とします。

 平均寿命を見れば、科学技術の発展により、いかに貧困が緩和されたかが分かるでしょう。
 
平均寿命(推定なので、争いあり)  日本 現在の発展途上国 備考 
 10歳台 縄文時代〜戦国時代 存在しない 飢えと感染症に隣合わせ。乳児死亡率高い。現代人は「自然な生活」とか美化しがちだが、実際には、明日生きていられるかどうか分からない、死と隣り合わせの生活である。
 20歳台 江戸時代 同上 同上。間引きが行なわれ、疫病と飢饉でばたばたと死んでいった。乳児死亡率高い。乳児死亡率を除いても、平均寿命は30歳台。現代人は「太平の世」とか美化しがちだが、実際には、やはり、死と隣り合わせである。
 30歳台 明治時代 アフリカの一部 依然、感染症等による死と隣り合わせの生活。
 40歳台 大正時代 アフリカの一部 ようやく少しよくなった。しかし、依然、感染症等による死と隣り合わせの生活。
 50歳台 昭和20年頃 アフリカの一部 だいぶよくなってきた。人生50年といわれるが、ごく最近のことにすぎない。
 60歳台 昭和30年頃 北朝鮮、インド、ブラジルなど多数 発展途上国の多くは、平均寿命が60歳以上である。世界平均も60歳代である。日本の大正時代以前とは比べ物にならないくらい平均寿命が長い。
 70歳台 昭和50年頃 中国など 発展途上国の人口のかなりの割合は、平均寿命が70歳以上であることに注意
 80歳代 平成10年頃 存在しない 日本も、ごく最近達成したものである。 

 発展途上国であっても、日本の江戸時代よりも、平均寿命は長いのです。科学技術は、貧困の問題を緩和しているのです。たとえば、江戸時代には、天然痘で死ぬ人が多くいました。しかし、現在は、世界中から撲滅されているのです。科学技術の発展の恩恵は、発展途上国にも及んでいるのです。
 
 経済的な面で言っても、科学技術の恩恵は、世界中の国に行き渡っています。

 発展途上国にも、場所にもよりますが、プラスチック、コンクリート、予防注射、電気、ビル、車はあるでしょう。江戸時代には、日本中探しても、いずれもありませんでした。発展途上国も、少し裕福な場所ならば、テレビ、オートバイ、ラジオ等はあるでしょう。江戸時代には、将軍ですら、そのようなものを持っていません。

 もちろん、これは発展途上国を、国レベルで見た場合です。各個人のレベルで見れば、発展途上国の中には、文明の恩恵にあずかれない人もたくさんいます。そういう人が科学技術の恩恵を受けられるようにしていくことは重要です。
 
 しかし、発展途上国全体としてみれば、江戸時代の日本より豊かでしょう。そのように思えないのは、江戸時代が過去の歴史であることから美化されているからなのです。歴史に残っていない名もない人々が毎日のように飢えや疫病で死んでいっているのを、私たちが目撃できないからなのです。私たちは、アフリカの惨状を、テレビ等で知ることができます。しかし、江戸時代の惨状は、知ることができません。かえって、江戸時代の時代劇で、役者がその時代を牧歌的に演じているので、いかにも文明的な生活を人々がしていたかのように、錯覚するのです。しかし、江戸時代の実態は悲惨なものでした。生まれた子供は、30歳にもならないうちに、大半は死んでいたのです。

 このように、メディアの影響で、科学技術がないことが、どれだけ悲惨なことかを、人々は過小評価してしまうのです。

 科学技術の発展により、世界には、江戸時代以前のレベルの貧困は、少なくとも国レベルでみれば、撲滅されたのです。

 現代の発展途上国は、江戸時代にはなかった、電球、電話、インターネット、ラジオ、テレビ、オートバイ、ビル、近代的病院、現代薬、予防注射、車、飛行機、鉄製の船などを持っています。発展途上国の代表は、飛行機で地球の裏側に飛び、スピーカーと通信手段を用いて世界各国の代表と議論できます。

 これらはいずれも、江戸時代では、将軍や大名すら、全くできなかったことばかりなのです。

 現代の発展途上国は、少なくとも一部の人は、世界地図を持っています。江戸時代には、将軍や大名ですら、世界地図は持っていませんでした。海を越えると何があるのかも知らなかったのです。


2.日本は先進国として、世界の科学技術を発展させる役割を果たし、世界に貢献すべきである

 日本は、先進国として、科学技術を発展させる役割を果たすべきです。それが、発展途上国の発展を助け、貧困の問題を緩和することにつながります。

 日本がアジアの国として先進国入りしたことは、中国などのアジアの国の発展にも良い影響を与えています。日本が、先進国になったことは、アジアの発展を促し、世界の平均寿命を引き上げたといえるでしょう。アジアの国は、おおむね60歳台以上の平均寿命となっています。

 日本が、世界の科学技術を発展させることこそが、発展途上国への援助になるのです。日本は、先進国として、科学技術の発達させ、発展途上国を助ける役割を果たさなければならないのです。

 本当の援助とは、単にお金を援助することではありません。科学技術の進歩や、技術援助は、より永続的に発展途上国の人を助けることができるのです。

 そして、科学技術の発達には、理工系、理系の人々の努力が欠かせません。よって、理工系、理系の人々は、世界の貧困の緩和について、決定的に重要な役割を担うことになるのです。


3.発展途上国の連帯の重要性

 日本が明治維新により近代化に成功した理由は、国民の連帯にあります。

 江戸幕府をフランスが、新勢力をイギリスを支援しました。日本の内部で血みどろの争いが起これば、植民地になっていたでしょう。

 しかし、徳川慶喜は大政奉還をしました。世界の歴史の中でもまれなことに、権力者が自ら権力を返上したのです。そして、日本という国が1つにまとまったのです。この連帯の精神と、科学技術を貪欲にとりいれる国民性のおかげで、日本は近代化しました。

 そして、日本は、平均寿命が20歳台の貧しい国から、世界の最長寿国かつ世界第2の経済大国になったのです。

 アフリカの人々は、内部で争っています。アフリカは、内部で争うのではなく、連帯が重要です。

 科学技術を貪欲に吸収することが、近代化には不可欠です。日本は、伝統を大切にしながら、科学技術を取り込んでいます。科学技術を取り入れることは、伝統を守ることと矛盾するものではありません。

 そして、発展途上国は、先進国の理系と連帯することが必要です。先進国の理系は、先進国の内部では、地位・待遇が必ずしも高くないのです。発展途上国は、先進国が科学技術を発展させるのを促進させるため、先進国の理系、理工系と連帯し、その地位向上を助けることが重要です。たとえば、これらの人々が科学技術をもっと発展させることができるよう、知的財産の保護に賛成することが重要でしょう。

 逆に、先進国の理系、理工系は、発展途上国への一層の技術援助を行ない、発展途上国の発展を助けるべきでしょう。

 科学技術の発展による発展途上国の貧困の緩和のために、発展途上国と、先進国の理工系が、連帯する必要があるのです。

 もちろん、先進国の理系、理工系同士が連帯することも重要です。

II.日本の貧困は、理系の地位向上により緩和される

 目を日本に向けると、現在、日本では貧困層が増加しています。貧富の格差が拡大し、働いても豊かにならないことが問題になっています。

 貧困が増えることは、日本であれ、世界であれ、好ましくないでしょう。日本の中で格差を増大させることは、日本が1つにまとまり、連帯を強固にすることに反します。日本の発展は、国が1つに連帯することにより支えられてきました。格差社会を作ってはならないでしょう。

 また、貧困の緩和には、科学技術の進歩が必要です。科学技術の進歩により、貧困はかなり緩和されています。

 日本は貧富の格差の少ない国でした。しかし、現在は、格差が増大しています。ホームレスも、かなり存在します。

 しかし、江戸時代の頃に比べれば、相対的には緩和されているわけです。飢饉で何万人もの餓死者が出るというわけではないからです。これは、科学技術の恩恵といえるでしょう。

 科学技術予算を、ホームレスなど貧しい人を救うための技術開発にあてることが重要です。安くて安全な住宅の技術などの開発が重要でしょう。これらは、民間では利益が出ないので、政府が科学技術予算を投入する必要があります。開発された技術や製品は、世界中に輸出すべきでしょう。

 基礎研究も重要です。発光ダイオードによる野菜工場の実現など、新技術を開発していくことが重要でしょう。

 理系、理工系の連帯と地位向上による科学技術の進歩により、世界と日本の貧困問題を解決する必要があるでしょう。

III.貧困の解決 −すべての人が人間らしい暮らしができるようにー

 人間1人1人の善意は小さいので、科学技術の進歩なくして世界の貧困の問題を解決するのは困難でしょう。

 たしかに、アフリカの飢餓を報道している人もいるし、何とかしようと援助をしている人もいるのです。しかし、多くの人々は、動かないのです。アフリカの飢餓を救う運動が、社会に広く浸透することはないのです。

 また、お金を援助するというのは一過性に終わってしまいます。より永続的な解決は、科学技術を進歩させ、技術援助をし、科学技術の恩恵を広げていくことです。人類の有する科学技術の水準を地道に上げていくことが、世界の貧困の問題を緩和する現実的な道なのです。

 そうでない解決策があると思うかもしれません。人間の性質をより利己的でないものに変えることにより、魔法のような解決があると考える傾向は、理系の方が文系よりも強いのです。しかし、有史以来、人間の性質は変わっていません。平安時代の文学は、現代に通用します。人間の性質はあまり変わらないからです。

 しかし、平安時代の科学は、現代には通用しないのです。科学技術だけが、圧倒的に変わっています。人間は変えられなくとも、人間の有する科学技術の水準は、確実に上げることができるのです。

 平安時代の人間と、現代の人間の最大の違いは、人間の性質ではありません。科学技術の水準が全く違うのです。

 もちろん、科学技術は万能ではありません。科学技術が発展しても、貧困の問題が完全には解決しないので、科学技術は貧困を解決できないという誤った考えが広がってしまったのです。

 しかし、そのような考え方が間違っていることは、上記の平均寿命の例でも明らかです。科学技術による貧困の解決こそが、実は一番確実で効果的な道なのです。

 発展途上国の平均寿命は、60歳台に達しているところも多くあります。日本の江戸時代はおろか、大正時代でも、そんなことは、決して実現しえませんでした。科学技術の進歩がなければ、これを人間の善意だけで実現できたでしょうか。

 また、発展途上国が内部分裂や内戦をやめて連帯し、科学技術を貪欲に吸収して、近代化をなしとげることを助けることも永続的な解決に近づくでしょう。日本の明治維新は、発展途上国にとって、1つの参考になるかもしれません。日本は、そのような動きを、最大限に支援すべきでしょう。

 人間1人1人の善意には限りがあるため、連帯を広めていくことにより、人間の小さな善意を集めることが重要でしょう。

 理系の広範な連帯も、理系、理工系の地位向上と、科学技術の進歩とを通じて、世界中の人々に利益を広げていくことが目的です。貧困の緩和は、その1つです。理系、理工系の地位が向上し、科学技術が進歩することにより、人間の矛盾や、社会の矛盾が、少しずつ、しかし確実に解消していくのです。

 本サイトの基本的な考え方は、科学技術の発展は人類の福利を増大させ、科学技術の発展を促進するためには、理系離れを防ぎ、理系、理工系の待遇、社会的地位を改善する必要があるということです。

 この基本的な考え方が同じである限り、細かい違いを乗り越えて、連帯が可能だと思います。基本的な考え方が同じであれば、先進国に限らず、発展途上国であっても、連帯が可能なのです。

 そして、1人1人の善意は小さくとも、科学技術の進歩に賛成する人が、世界の数十億人に広がっていけば、日本は、世界の科学技術を発展させる役割を、一層よく果たすことができるのです。

 そして、それは、世界と日本の貧困の問題の緩和に大いに役立つのです。



 さらに、世界の理系、理系関連団体との連帯を目指していくことも、科学技術の振興に役立つでしょう(理系の世界大連帯)。

 理系の世界大連帯により、科学技術の進歩の促進を通じて最大の利益を受けるのは、他でもない現在及び未来の世界人類全体なのです。

TOPに戻る

本ページは、リンクフリーです。 Copyright © rikoukei at 理工系の地位向上の会 at 理工系.com 2007.1.24. All Rights Reserved.